安全な食事のためのベッドの姿勢調整方法
患者さんがベッド上で食事を摂った李、歯科治療や口腔ケアを受ける際、姿勢が悪ければ誤嚥や窒息のリスクが高まります。このため、事前に患者さんの姿勢を調整しておく必要があります。
でも姿勢調整は簡単なように思えても、実は結構難しいものです。拘縮が極度に亢進しているような患者さんの場合には、理学療法士や作業療法士に依頼する方が良い場合もありますが、そうではない患者さんの場合には、ちょっとしたコツさえ掴めれば、歯科でも十分に対応できます。
ここでは、ベッド上で見かける崩れた姿勢とその原因および対策のコツをご紹介します。
すべり座り
【状態】
骨盤が後傾し、お尻が前方にずれている不安定な状態です。 仙骨部に体圧が集中し、皮膚が摩擦・ズレにさらされて褥瘡ができやすくなります。
ベッドの背上げ機能と膝上げ機能を併用し、お尻を安定させますが、膝を上げすぎると腹部が圧迫されて呼吸が浅くなり、食事がしにくくなります。ベッドの駆動部分が体型に合っていない小柄な患者さんによくあります。
また、股関節が屈曲しにくい患者さんの場合、ベッドをギャッジアップすると足元の方に身体が滑ってしまいます。膝関節が屈曲拘縮している患者さんも同じように滑ってしまいます。
【対策】
ベッドと身体を合わせることが大切です。ベッドの駆動部分と大転子(大腿骨の上部外側にある骨の出っ張り)を合わせることによって、しっかりと身体をフィットさせることができます。
ベッドと体が合わない小柄な患者さんの場合には、下肢全体にクッションを差し込んでから背上げすると前滑りしません。(その場合には、膝上げ機能は使用しません。)
横倒れ
【状態】
ベッド上で身体が傾いている状態です。すべり座りと複合している場合が多くあります。頭や首が傾いていると口腔ケアや食事時に誤嚥する可能性がありますし、術者や介助者にとっても負担が大きくなります。
横倒れが起きる原因としては、枕の幅が短いことや片方の上肢が安定していないことが挙げられます。特に、片麻痺患者さんに多く見られます。
また、そもそも脊柱自体が変形して体幹から曲がっている方や股関節がどちらか片一方だけ屈曲できない方という方も横倒れしやすくなります。
【対策】
ベッドに対して体幹を正中位にするために、さまざまなサポートを行います。
枕は頭が落ちない大きさと柔らかさにして、枕の下にタオルやクッションを入れることによって、頭が倒れるのを防ぎます。
マットの下にタオルやクッションを入れて、マットの下から支えを作るという形も有効です。全体的にバケットを作るような形にします。これは、枕の下にタオル等を入れても、患者さんが取ってしまう場合などに有効です。
ポジショニングの注意点
ベッドや車椅子でのポジショニングで良くある間違いが、タオルやクッションをたくさん使うことです。部分的にサポートするためにタオル等を入れていくと、必然的に枚数が増えてしまいます。姿勢を整える前に、身体全体を注意深く観察して、どの部分をサポートするのが最も効果的かを考えることが大切です。
その際に便利なのが市販されているU字クッションです。例えば、枕と一緒に体幹上肢も支えることができるので、使用するクッション材を減らすことができます。
U字クッションがなくても、大きめの服の袖の中にタオルを詰めるとU字クッションと同じような使い方ができますので、患者さんやご家族に勧めると喜ばれます。
ベッドも車椅子も、すべり座りを改善することが一番のポイントです。
この講座では、具体的な姿勢調整の方法とコツを動画をもとに解説しています。
この講座を観ることで得られることは…
- 口腔ケアや食事観察・指導時の誤嚥リスク低減に必要な姿勢調整ができるようになります
- 施設でポジショニングを行う際の注意点
- 要介護高齢患者に多い3つの姿勢とその理由および姿勢調整のポイントがわかります
- 介護職員の食事指導やミールラウンドに役立つ新しい視点
- 作業療法士によるベッド上や車椅子上での実演動画があるので、姿勢調整のポイントが掴めます
この講座の内容
Part1:ポジショニングのアセスメント
1.崩れた姿勢の見つけ方とその原因
- 崩れた姿勢を早期に見つける
- 原因をみつけ、すぐに対応
2.ベッドでの姿勢評価
- ベッドでの崩れた姿勢(頭・腰の位置を見る)
- 崩れた姿勢の主たる原因
- 身長170cm以下でギャッジによるすべりが起こる理由
3.ベッドでのポジショニングの実際(食事の姿勢)
- ベッド上で食事するときの基本姿勢
- すべり座り対策<ベッドと身体を合わせる>
- 横倒れ対策<体幹は正中位にする>
- 頚部が過屈曲又は過伸展対策<あご引き>
- 背上げ時の上肢のサポート
- オーバーテーブル 手すりがあると食べにくい?
- 背角度30度と60度の特徴
- 口腔ケア、摂食・嚥下の姿勢
- 一部介助または全介助の場合
- 自力摂食が可能な場合
4.車いすでの姿勢評価
- 標準型車いすでの崩れた姿勢
- 崩れた姿勢の主たる原因
5.車いすでのポジショニングの実際(食事の姿勢)
- 椅子(車いす)の基本的な食事姿勢
- 車いすを選ぶ
- すべり座り対策<座面の奥行きと背中>
- 足台を使用する理由は?
- 肘受け(上肢のサポート)
- 上肢のサポート 肘の高さを合わせて口までの距離を調整
- ななめ座り対策<座面>
- ティルト・リクライニング車いすの活用法
6.食事介助におけるポジショニングの留意点
- 食事介助を行う時のポイント
- おいしく、安全に食べてもらうための姿勢
- 摂食時姿勢の禁忌事項
- 問題
- 解答・解説
Part2:実際の調整(動画)
1.ベッド上の実際での調整
- ベッドでの姿勢の評価
- 布団をめくって身体の状態を確認
- ベッドの駆動点と大転子を合わせて圧迫・滑りを防止
- スライディングシート
- ベッドでの姿勢の調整
- U字クッションは枕と体幹・上肢の支持を同時に行える
- 足底がしっかり接地していると、食事時の噛む力・飲み込む力が向上
- 正中位を保てる姿勢に整える
- 動作後は圧抜きを行う
- 30度は、あごと胸の間に指が3〜4本入る状態
- 姿勢調整せずにギャッチアップするとどうなるか
- ベッドでの食事の姿勢(30度の場合)
- 食事が見える位置までオーバーテーブルを下げる
- 介助者は患者から見える位置に座り、できるだけ正面から
- 食事介助では、患者が介助方法によって動いていることを意識
- ベッドでの食事の姿勢(60度の場合)
- 肘や前腕を支えることで、体幹が安定しやすくなる
- 60度を超えたら、頭のクッションや枕を外す方法もある
2.車いす上の実際での調整
- 車いすでの姿勢の評価と調整(標準型)
- 肘掛けを掴む動作は恐怖心から出るシグナル
- たるみに負けないクッションや詰め物を入れる
- 食事時は上肢の安定が重要
- 食事の姿勢と日常の姿勢は異なる
- 足台を別に用意して対応
- 足底が安定すると座面と上肢が安定
- 座面→足底→上肢→頭部の順で姿勢を整える
- 車いすでの姿勢の評価と調整(ティルト・リクライニング)
- 股関節が曲がらない人を直角に座らせると滑る
- 車いすでの食事の姿勢(ティルト・リクライニング)
- 車いすでの姿勢の調整(ティルト・リクライニング)
- 服を使った体幹サポート
- 問題
- 解答・解説
- まとめ
などなど。


H.A. –
ベッド上で口腔ケアを行う前準備の際の行うポジショニングの参考になりました。身体の位置やベッドの操作を模擬的にみることができよかったです
S.Y. –
クッション等購入せずに洋服にタオルを入れてという発想はすごいと思いました。ベッド上でのシートを使用して移動させるやり方も簡単にしかも介助者の負担も減らすのはとてもいい事だと思いました
H.W. –
患者さんのベッド上、車イスでの基本姿勢に近づけるための対策の仕方がとても勉強になりました
S.N. –
ベッド上の姿勢調整のお話では、ベッドのどこが屈曲するのか、身体のどこを合わせればいいのかを、とても分かりやすく解説されていて良かったです。歯科衛生士の自分が実際にスライディングシートを使うことは難しいですが、ミールラウンドなどの場面で「その位置や姿勢では誤嚥する可能性があるのでこのようにしてみては」と提案することはできると思います。そうできるように知識や手技を日頃から確認しておくことは大切だと思いました
M.O. –
口腔ケアに介入する際にも、車いす上でななめ座りをされている方をよく見かけます。そのような方の姿勢の整え方が分かりやすかったです。また、ベッド上で寝ている方で膝にクッションが入っている方も多く、そのような方のリクライニングの方法を知れて良かったです。パジャマの袖にタオルをいれてクッション代わりに使用する方法はとても印象に残りました