安全な訪問診療に欠かせない薬剤知識をアップデート
全身疾患を持つ患者さんの歯科医療に際しては、訪問診療の臨床で使える全身疾患や薬剤の知識が不可欠です。
特に、訪問診療の患者さんの多くが5剤以上の薬を服用しており、基本的には歯科治療に伴う休薬は行わないため、薬による副作用を十分に考慮する必要があります。
本講座では、内科医と歯科医のダブルライセンスを持つ日本大学 歯学部の米永先生に、訪問診療の臨床で役立つ薬剤関連の知識を解説していただきました。
ここでは、その一部をご紹介します。
脳血管疾患患者の対応
訪問診療に多い脳血管疾患患者の歯科治療においては、抗血栓薬の服薬により出血リスクが高まっていることに注意することが基本です。
脳血管疾患患者は、ワルファリンやDOACなどの抗凝固薬やアスピリン、シロスタゾールなどの抗血小板薬などを服用していますが、実際に、多剤服用患者の中には薬を飲み忘れる方がいらっしゃるため、医科の指示通りに正しく服薬できているかを確認することが重要です。
一方で、観血的処置の場合には、止血処置について十分に注意が必要です。特に、ワルファリン服用患者の場合には、出血が止まらなくなる可能性が高いため、術前のINR値の確認が必要になります。
嚥下障害の原因薬剤
患者が服用している薬剤の多くが嚥下障害の原因となっている可能性があります。
例えば、高血圧や狭心症、一部の不整脈の治療に広く使われるカルシウム拮抗薬(Ca拮抗薬)は、平滑筋や骨格筋の機能障害、下食道括約筋の圧低下、口腔乾燥などを引き起こし、結果として、嚥下機能低下を招く可能性があります。
もちろん、嚥下障害の原因はさまざまですし、それらが複合的に影響している可能性もありますが、嚥下障害対応においては、薬剤性嚥下の可能性も念頭におく必要があります。
なお、薬剤の中には咳反射が起こりやすくなる薬剤も確認されています。例えば、ACD阻害役やシロスタゾールなどです。
このようなことを知っていれば、服薬変更の提案ができる場合には、役立つかもしれません。
薬剤関連口腔乾燥症について
要介護高齢患者の多くが口腔乾燥症ですが、その原因の一つとして薬剤が挙げられます。ただし、薬剤によって口腔乾燥症への影響はさまざまです。
例えば、Ca拮抗薬や利尿薬では口腔乾燥が頻発するとされていますが、NSAIDsは直接の作用はなく、口内炎・粘膜障害をきたして間接的に乾燥感が生じる場合があります。
その他にも、食事内容、栄養状態、体調などの複合的な影響を受けて口腔乾燥症になっている可能性にも配慮する必要があります。
下記に、代表的な薬剤の口腔乾燥・嚥下障害の副作用の有無を紹介いたします。
また、薬局と連携できれば、歯科治療時の薬剤影響を詳しく把握することができるため、普段あまり知ることの少ない薬局の状況や対応がわかる動画もあります。
薬局との連携構築・強化にお役立ていただけましたら幸いです。
このDVDを観ることで得られることは…
- 安全な歯科診療に役立つ全身疾患と薬剤の関係が理解できます
- 必須! さまざまな薬剤による口腔乾燥・摂食嚥下障害の副作用の有無と特徴
- 訪問診療患者に多い多剤服用者の問題点や具体的な対応方策がわかります
- 4つの薬剤性嚥下障害を引き起こす薬剤一覧
- よくある疾患患者の歯科診療時の薬剤リスクと対応策が整理できます
などとなっています。
このDVDの収録内容をご紹介すると…
Part1:講義
- 第1回 訪問診療における全身管理の基本 まとめ
- 第2回 全身疾患と歯科治療の関係 まとめ
- 老年症候群
- メタボリックドミノ
- Antimicrobial Resistance(AMR)とは
- AMRは人類への脅威
- AMR対策に求めるワンヘルス・アプローチ
- 大阪大学病院の例
1.高齢者に多いポリファーマシーの問題点
- ポリファーマシーとは
- 多剤処方の問題点
- ポリファーマシーの問題点
- ポリファーマシーの歯科診療でのリスクと対応策
- 薬剤耐性菌の発生要因
- ポリファーマシーとAMR
- 代表的なAMR病原体であるMRSAの検出率
- 高齢者・介護施設での多剤耐性菌保菌の実態
- 終末期と抗菌薬
- 投薬以外の対応も検討
2.抗凝固薬・抗血小板薬と歯科治療(出血リスクと対応策)
- 抗血栓薬:抗凝固薬と抗血小板薬
- 脳血管疾患とは
- 脳血管疾患患者の歯科診療における注意点
- 脳卒中治療ガイドライン2021
- 静脈血栓の誘発因子(Virchowの血栓形成3大因子)
- 静脈血栓塞栓症(VTE)
- 深部静脈血栓症(DVT)
- 全身の診察も大切
- アセトアミノフェン含有製剤の添付文書2023年10月改訂
3.ステロイド・免疫抑制薬の影響(感染リスク・創傷治癒)
- ステロイド・免疫抑制薬
- ステロイド・免疫抑制薬のリスク
- 歯科での侵襲の程度
- 喘息予防・管理ガイドライン2021(JGL2021)
- 喘息治療薬の分類
- 喘息について
4.骨吸収抑制薬(BP製剤・デノスマブ)の影響(在宅での顎骨壊死への対応)
- 骨吸収抑制薬(BP製剤・デノスマブ)
- 臨床診断:右下顎MRONJ
5.精神科薬(ベンゾジアゼピン系、抗うつ薬)と嚥下機能への影響
- 精神科薬と嚥下機能
- 薬剤性嚥下障害
- 誤嚥時の検討薬剤
- 誤嚥性肺炎の原因
- 胃婁の検討事項
- 適切な栄養管理
- 皮下補液・投薬方法(出血傾向、DICには禁忌)
6.薬剤関連口腔乾燥症とその対応
- 薬剤関連口腔乾燥症
- 主な薬剤による口腔乾燥・摂食嚥下障害関連の副作用の可能性
- まとめ
- 復習テスト
Part2:潜入動画編
1.終末期の投薬への取り組み
- 終末期医療での薬局の役割
- オピオイドの副作用
2.ポリファーマシー対応
- ポリファーマシーの問題点と対策
- 高齢者は処方の見直しが難しい
- 気になる薬の例
- 服薬情報提供書の運用
3.残薬対応
- 残薬が生じる理由
- 飲み忘れ、飲んだかどうかを忘れる
- 服用薬が多い
- 残薬対策
- 1回あたりの薬をまとめる
- お薬カレンダー
- 残薬対応の事例
4.薬剤別注意点(抗血小板薬・抗凝固薬、ステロイド、BP製剤)
- 抗血小板薬、抗凝固薬服用患者は歯ぐきからの出血が多い
- 吸入薬ステロイドでは口腔カンジダに注意が必要
- リスク回避のため、吸入後のうがいや歯磨き前の使用を勧める
- BP製剤服用患者には歯科受診を進めている
5.歯科薬科連携
- 歯科医師に服薬情報提供書等で情報を提供
- 歯科と薬局の連携が重要
6.その他(一包化調剤、軟膏調剤)
- 調剤現場の様子
- 薬の調達
- 一包化作業
- 軟膏の混合
- 抗血小板薬・抗凝固薬
- ステロイド
- 骨粗鬆症治療薬
- まとめ(振返りのポイント)
- 復習テスト
などなど。


K.Y. –
患者の診療時には、常にこの講演内容についての意識を持ちながら、その都度、薬手帳を確認し、薬について自ら調べたり、薬剤師との連携を活用して、服薬と患者の症状との関連を推測し、薬剤服用の背景を探ることが大切であることを思い知らされました
T.Y. –
ポリファーマーシーの対応を意識すること。具体的な薬剤について、示され大変参考になりました
R.Y. –
抗菌薬の有効性の低さに驚きました
R.M. –
ステロイドの吸入薬は歯磨きの前は気づきませんでした。フッ素では洗い流さないようにしてフッ素が口腔内に残るように指導しますが、ステロイドでは全く逆で残ってしまうことがカンジダ症誘発の原因になるということですね。カンジダ症の患者さんにはこの薬の吸入が内かの聞き取りがいるかもしれないとおもいました。
M.H. –
薬剤について歯科医が認識を持つ重要性を再認識した