知らないと危ない! 誤嚥性肺炎の意外な真実
歯科が介入しているのに、要介護高齢患者が誤嚥性肺炎を発症したら、歯科医院の信頼性が失われかねません。
もちろん、歯科は週に1回介入するだけなので、誤嚥性肺炎発症の責任が歯科だけにあるわけではありませんが、ご家族や介護職員は「どうして誤嚥性肺炎の危険性に気付いて、忠告してくれなかったのか?」と思う可能性があります。
そのような事態を防ぐには、どうしたらいいのでしょうか?
誤嚥性肺炎に対する理解を深める
ご家族や介護職員が誤嚥性肺炎に対する危機感を感じるのは、患者が食事中にむせているところを見た時です。
むせているということは、大なり小なり誤嚥していることが考えられるため、誤嚥性肺炎の発症原因を説明して、歯科が介入することのほか、普段の生活において注意すべきことや場合によっては他職種の協力が必要なことを説明します。
例えば、誤嚥の修飾因子にはさまざまあり、口腔環境の整備や食事姿勢、食形態の調整は歯科で対応できるが、薬剤影響や呼吸のタイミングなどは他職種に相談することを勧めるといったことです。
食事観察で誤嚥の原因を推定する
単に誤嚥の因子を説明するだけではご家族や介護職員も納得できないないでしょうから、実際の食事の様子を観察した上で、むせ、誤嚥の原因を推定する必要があります。
姿勢調整や食事介助の仕方など、その場で改善できるものもあるでしょうし、嚥下内視鏡検査などの精密検査をやらないとわからない場合や、服薬剤の影響が想定される場合もあります。
食事観察を実施した上で、ケア計画立案や指導・助言を行います。
注意! 誤嚥性肺炎にもさまざまあります
ただし、実際問題として、誤嚥性肺炎発症を防ぐことは容易ではありません。全身および嚥下機能は低下する傾向にありますし、口腔内常在菌をゼロにすることはできないためです。
このため、ご家族や他職種を巻き込んで誤嚥性肺炎発症の可能性を低減することが大切になりますが、食物誤嚥による誤嚥性肺炎だけではなく、その他の誤嚥性肺疾患にも注意が必要です。
特に、主に就寝中の唾液誤嚥を繰り返すことで慢性肺炎が起こる「びまん性嚥下性気管支炎」や逆流した胃酸などを誤嚥して急性の肺損傷を引き起こす「誤嚥性肺臓炎(Mendelson症候群)」に注意が必要です。
びまん性嚥下性気管支炎は、就寝中の唾液誤嚥なので発見が難しいですし、発症した場合に食物誤嚥による肺炎との判別が難しいという特徴があります。誤嚥性肺臓炎は誤嚥後数時間で発症し、劇症であるため、早急な治療が必要です。
そのような知識を関係者と共有して、日々の生活の中で注意して観察して気付いてもらうことが大切になります。
要介護高齢者の訪問診療においては、常に誤嚥性肺疾患発症の可能性を考慮する必要があります。
患者の異常に気付いて、適切な処置や助言が行えることが、歯科医院の信頼性向上に役立ちます。
そのためには、訪問診療に係るスタッフ全員が誤嚥と誤嚥性肺疾患の理解を深め、患者の観察のポイントを理解しておくことが重要です。
この講座を観ることで得られることは…
- 誤嚥と誤嚥性肺疾患の理解が深まって、適切な診療・ケア・助言ができるようになります
- 誤嚥性肺炎と誤嚥性肺臓炎の違いとは?
- ミールラウンドで観察すべきポイントや他職種とのコミュニケーションの仕方がわかります
- 介護職員から感謝される、食事支援の方法
- 患者の食事状況を客観的に評価できる25枚のカード
この講座の内容
前編:誤嚥を理解する
- 誤嚥性肺炎
- ミールラウンド
- 誤嚥とは
- 肺炎とは
- 誤嚥している患者さんはどっちでしょうか?
- 誤嚥性肺炎の患者さんはどっちでしょうか?
- 誤嚥の修飾因子
- 誤嚥の分類
- ムセに関する分類
- 誤嚥物と量に関する分類
- 多量誤嚥(Macro Aspiration)
- 急性的誤嚥性肺炎
- 嚥下性肺疾患
- びまん性嚥下性細気管支炎
- 少量で反復性の不顕性誤嚥
- 嚥下性肺疾患の主な原因は
- 微量誤嚥(Micro Aspiration)
- 誤嚥性肺臓炎
- Mendelson症候群
- 誤嚥性肺炎 vs 誤嚥性肺臓炎
- 食べる力
- 脳内でコントロールされる食欲
- 視床下部
- 大脳辺縁系
- 食事観察サポート「い~とみる」
- 確認問題
- 小括
後編:潜入動画
- 歯科が関わる高齢者施設での食支援回診
- 症例1
- ミーティングの様子
- ミールラウンドの様子
- 症例2
- ミーティングの様子
- ミールラウンドの様子
- 確認問題
- 小括
- アルツハイマー型認知症の食支援
- 食事介助において意思疎通は必須
- 声掛けのポイント
- 声掛けの方法
- 総括
- 誤嚥の修飾因子
- 食べる力
- 食支援の目的を常に考える
などなど。


M.H. –
食支援への歯科からの介入の仕方が良く分かった
M.O. –
スライドのイラストやアニメーションが面白く、とても分かりやすかったです。誤嚥の種類や誤嚥性肺炎が起こる仕組みについて、日々ケアの中で意識すべき点を改めて考える機会になりました
M.U. –
誤嚥性肺炎の定義が参考になりました
C.S. –
食事介助はしていなくても、口腔ケア後に誤嚥性肺炎を起こさせないように常に意識して行動したいと思う
R.D. –
良かったです。参考にします