訪問診療のトラブルを回避するため訪問先で実施すべきこととは?
『歯科医療安全情報報告書(日本歯科医学会連合 歯科医療事故情報分析評価委員会)』によると、訪問歯科診療における局所的インシデント・アクシデントが54件、全身的インシデント・アクシデントが4件発生しています。
訪問診療に限った話ではありませんが、診療中や診療後にトラブルが発生すると、その対応に時間や費用がかかるだけでなく、歯科医院の信頼を失うことになりかねません。
このため、実際に発生したトラブルを知っておけば注意喚起になりますし、類似のトラブルを想定して対策を施しておくことができます。
訪問時・訪問後の忘れ物
『歯科医療安全情報報告書』では、忘れ物に関するトラブルが数多く報告されています。
例えば、事前に入手した患者情報を持たずに初診患者宅を訪問した、既成トレーを忘れたため診療ができなかったという訪問時の忘れ物から、患者にパルスオキシメーターを装着したまま帰院したとか、患者の寝具内に探針1本を落としたまま帰院したという事例が紹介されています。
このようなことがあると、患者や家族、他職種からの信頼を失うことになりかねないため、十分に注意したいところです。
診療前の身体観察や住環境の確認
『歯科医療安全情報報告書』には、間質性肺炎患者が歯周管理中に息苦しさを訴えたが、当日パルスオキシメーターを持参しておらず、訪問看護師からの情報を元に危険性は無いと判断して当日の診療を終了したものの、翌日に呼吸困難が深刻化し入院した事例が紹介されています。
診察前のバイタルチェックや体重減少の有無などに加えて、患者の身体を触ったりして、状態を確認することも重要です。
例えば、手を触れて冷たいようであれば末梢血流が減少して血圧が高くなっている可能性があります。冬場であれば、室内温度に注意する必要もあります。室温が19℃未満の場合、心臓血管イベントのトリガーになる危険が指摘されています。
身体観察の結果を記録に残すとともに、他職種と情報共有することも大切です。
訪問先の設備の使用前・使用後
『歯科医療安全情報報告書』によると、ポータブルの切削器具の充電が切れて治療が中断したとか、抜歯前に血圧測定を試みたが電池切れだったなどの電池切れのトラブルも多いようです。
また、訪問先のテーブルや電源、水などを使用せざるを得ないことがありますが、独居患者さんのようにご家族不在の場合には、患者さんに一声掛けるのはもちろん、事前にご家族にも使用許可をいただいておくことが大切です。
診療後は、設備使用後は掃除をして元に戻し、合わせて忘れ物がないかどうかを確認します。
火災発生防止
『歯科医療安全情報報告書』では、ガスバーナーが周囲に引火したという火災事例が報告されていましたが、特に冬場はレジンの取り扱いにも注意が必要です。
冬場は石油ストーブを使っている患者さんも多いため、引火性の強いレジンなどの取り扱いには十分に注意する必要があります。
このDVDを観ることで得られることは…
- 訪問診療のトラブル発生防止に役立つ知識とノウハウ
- 独居高齢患者の訪問診療で注意すべきことと対応方法
- 初診時までに把握しておきたい8項目
- 訪問診療の際、自然な形で身体診察を含む患者の状態を確認する方法
- 訪問診療で実際にあった5種類のインシデント・アクシデントに対する発生防止アイデア
などとなっています。
このDVDの収録内容をご紹介すると…
Part1:訪問歯科診療のトラブル防止策
歯科医療事故情報分析評価委員会からの報告(2020年)
- 局所的インシデント・アクシデント
- 忘れ物
- 器具器械トラブル
- 落下・誤飲
- 出血
- 火災
- 対応策
- 全身的インシデント・アクシデント
訪問歯科診療初診時の多職種と情報共有
- 地域というチーム医療
- 訪問歯科診療の初診時まで流れ
- 初診時までにおさえておきたい内容
- 意思決定支援
初診時の身体診察の重要性
- 口腔内をみる前に簡単な問診
- こういう患者さんは医科にコンサルト
地域医療での歯科診療連携の重要性
- 症例:急性大動脈解離Stanford typeA
- 入れ歯を何とかしてほしい
- 弓部人工血管置換+オープンステントグラフト
- この症例、紹介状作成しましたが
- 途切れない歯科医療を提供するためには
- 地域というチーム医療 チーム内での情報共有する
- 習熟度テスト
Part2:潜入動画編
独居高齢者における訪問歯科診療のリアル
- 訪問診療の道具
- 今回の患者様の背景
- 出発前に
- 患者宅に入る前に
- 入室・挨拶
- 身体観察
- 問診
- 道具のセッティング
- 光源について
- 義歯の修理について
- 住居環境について
- 義歯の修理
- トイレ・水場・電源について
- バイタル測定について
- 義歯の調整について
- レジンの取り扱いについて
- 血圧測定
- 血圧の変動について
- 日常生活動作について
- 多職種共有ツールについて
- 習熟度テスト
- 本講座のまとめ
などなど。


A.S. –
自分にも経験があるが、忘れ物をすることが結構あるのでスタッフの誰でも用意できるようなチェックリストを早めに用意したいと思った
S.I. –
入院患者さんに訪問歯科診療した後、継続して治療必要な時に退院後、その方のかかりつけ歯科医院であれ継続歯科診療して頂くようにご家族の方にお願いしたりする事まで手配する事が大事だと感じました
T.O. –
歯科医療事故で「忘れ物」が多いという調査結果が印象的でした。当院でも忘れ物の対策を講じていきたいと思いました。訪問歯科診療における身体診察の重要性を再認識しました
K.Y. –
今回の講座により自分の方法と比較しながら、聴講させていただきました。特に患者との何気ない会話の中で、いろいろな情報を引き出す重要な要点があることを知らされました。会話も、ある意図をもって聞き出すことが大切であると感じました
T.S. –
患者さんの口腔内だけでなく全身で診るという広い視野が必要な事が学べました