大きな差が付く摂食嚥下障害対応
訪問診療の依頼で多いのが義歯治療や口腔ケアですが、他の歯科医院と差別化できるのが摂食嚥下対応です。
摂食嚥下対応と言うと嚥下内視鏡検査(VE)が必要と思われるかもしれませんが、必ずしもVEが必要というわけではありません。
それより重要なのが、摂食嚥下機能に大きな影響を及ぼす姿勢の調整です。
要介護高齢者に多い円背・猫背
円背・猫背の患者さんが座ると、背中が丸くなって骨盤が後ろに倒れてしまいます。そのような状態では、いわゆる頚部伸展になっており、摂食嚥下機能が阻害されます。
具体的には、喉頭蓋の反転不全や食道入口部の開大不全、喉頭挙上不全などで誤嚥しやすくなります。また、下顎挙動が制限されるため舌が後退し、食塊形成不全にもなります。
逆に言えば、食事や口腔ケアの際に、頚部伸展を矯正できれば、摂食嚥下機能を改善できる可能性があるということです。
車椅子でも頚部伸展位になっていることが多い
車椅子の背もたれ(バックレスト)はたわみ安いので、自然に円背・猫背となり、結果的に頚部伸展位置になっている患者さんが多くいらっしゃいます。
また、身体が硬い患者さんの場合、太ももの後ろの筋肉(ハムストリングス)が突っ張ることで骨盤が後ろに倒れ、結果的に円背・猫背になってしまいやすいってことがあります。
背中にクッションとか枕を入れる、腰のあたりにクッションを入れて骨盤を起こすことで、姿勢を正すことができます。
片麻痺患者さんの咀嚼機能・嚥下機能改善
片麻痺で全身の筋緊張が高い患者さんでは、咀嚼・嚥下機能が低下して、食べこぼしがあったり、むせがあったりすることがあります。
そのような場合でも、姿勢を調整して身の筋緊張を緩めることで、咀嚼・嚥下機能を改善することができます。
姿勢調整前後の症例を下に示します。
このように患者さんの姿勢調整だけでも、摂食嚥下機能の改善が可能なケースが多くあります。
摂食嚥下障害対応においては、理学療法士などの専門職と連携することが理想ですが、実際の現場では、連携が困難なこともあります。
このため、基本的な姿勢調整方法を習得しておくことをお勧めします。
正しい姿勢は摂食嚥下障害対応以外にも、安全な歯科治療や口腔ケア、食事観察などにも役立ちます。
この講座を観ることで得られることは…
- 正しい姿勢調整法が習得できるので、誤嚥予防だけで無く、口腔ケア時の患者負担軽減につながります
- 姿勢が咀嚼、嚥下に及ぼす影響が把握でき、適切なリハビリを行えるようになります
- 自己流の姿勢調整は危険!良くある間違いとは?
- 潜入動画を見れば、身体・口腔機能の評価や口腔機能訓練の方法が身に付きます
- ご存知ですか? 嚥下に良いが咀嚼には良くない姿勢
この講座の内容
Part1:姿勢と口腔・嚥下機能
- 自立支援・重度化防止を効果的に行うための取組の連携
- 姿勢と摂食嚥下
- 頚部の位置と嚥下
- 頭が前に出るのは?
- さらに頭が前に出る原因
- 頭部の位置と脊椎アライメント
- 身体の位置と口腔機能
- 咀嚼と姿勢
- 咀嚼筋の姿勢を保つ役割
- 頚部の筋肉
- 特に舌骨下筋群
- 姿勢と舌骨上筋群、下筋群
- リクライニングの利点、欠点
- 頚部屈曲と頭部屈曲
- 座位姿勢と嚥下
- 前腕支持と嚥下
- 車椅子座位姿勢
- 座位姿勢の調整
- 不良姿勢
- 不良姿勢の改善?
- 習熟度テスト
Part2:身体活動と口腔・嚥下機能
- オーラルフレイル対応マニュアル2019年
- 口腔や咽頭のサルコペニア
- 嚥下障害に影響をおよぼすもの
- 舌圧に影響を及ぼすもの
- 舌圧に関連する因子は?
- 咀嚼の問題に影響を与える因子
- 身体機能と口腔機能
潜入動画
- 姿勢、身体機能、口腔機能の評価
- 頚部の可動域の確認
- 開口量の確認
- 早口言葉
- 挺舌距離の確認
- 喉頭の可動性の確認
- 頚部の筋緊張の確認
- 体幹の可動性の確認
- 口腔機能訓練
- くちびる舐め
- 舌で頬を押す
- 頬のふくらまし
- 姿勢へのアプローチ
- 頚部の体操
- 全身の体操
- ポジショニング(車椅子座位)
- ポジショニング(ベッド上)
- 習熟度テスト
- まとめ
などなど。
I.O. –
タオルを使った姿勢の調整について、特に印象に残りました。診療の際の参考にさせていただきます。また、リハビリテーション職と歯科医療職との連携の重要性について、理解が深まりました
S.N. –
今まで口腔ケアをしていて姿勢補助をする時に、自分はベッドとの隙間を埋めるためにせっせとタオルを詰め込んでいました。それが間違いだと分かり恥ずかしいです。今後は今回の動画を参考に、本当の意味での姿勢補助をしてあげたいと思っています
C.M. –
姿勢の重要さを改めて知ることができた。ケアをする際は、姿勢にも注視して行うようにしたい
M.U. –
口腔内に関連があるけれども中々学ぶ機会のなかった姿勢や口腔嚥下訓練について学ぶことができ、とても良かった
M.S. –
シーティングや体位交換の具体例があって参考になった